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2008年7月6日 - 2008年7月12日

2008年7月11日 (金)

王子と野獣

デザインがあまりに味気なかったので、ちょっと変更してみました。どうです? かわいくなったでしょう?
といっても、こんなかわいい画像を作る能力は私にはないので、HP素材のおすそわけ。というサイトから頂戴してきました。ただでこんなもの配布してるなんて、ありがたい限りです。まあその分、スタイルシートはココログに合わせて自分で書き直す羽目になりましたが、IE 6 だろうと IE 7 だろうと Opera だろうと Firefox だろうと Safari だろうとほぼ同じ見栄えが実現できているので満足です(精確に云うと、IE だけ全体が中央に寄ってしまうため、苺の左端が切れてしまいます。IE なんてやめて、マウスジェスチャーが便利すぎる Opera の導入をオススメします)。

前置きが長くなりました。今回ご紹介するのは、パステル 2008 年 3 ~ 5 月号にかけて連載された、神代京子先生の『王子と野獣』。
実を云うと、2008 年 3 月号はあたりの多かった号で、今後もいくつか紹介することになると思いますが、今回この作品を紹介することにしたのは、ラストがあまりにもすばらしすぎたからです。

パステルの熱心な読者である皆さまからは、神代京子先生といえば「限定アクマ」シリーズだろ!とお叱りを受けるかもしれません。全くその通り。神代京子先生の作品なら、何を措いてもまず、「限定アクマ」シリーズを紹介すべきなのですが、我が家にはなんと全然ないんですね、あのシリーズを収録した号が。これも、私が怠慢な読者であるがための不備なのですが、運良く古本屋などでバックナンバーをゲットした暁には、ここで紹介させていただきたいと思います。

では、話を戻して『王子と野獣』について述べていきたいと思います。
前回はまずあらすじをご紹介いたしましたが、冷静に考えて、あらすじの紹介は特に不要だと思われますので、今回からは省略させていただきます。
さっそく、最初から見ていきましょう。

本作のヒロインである「ちえり」は、いきなりバーで飲んだくれてます。男にふられた直後なんですね。それを見かけて話しかけてきたのが、裕樹(ゆうき)。

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グラスの持ち方がハイパー cool です。男性読者の皆さんは、是非とも真似してください。

ちえりの顔についていた睫毛を拭い、それをきっかけにお持ち帰り。ちえりもノリノリで、酔い覚ましの水をわざと体にこぼし、「タオルじゃ間に合わないよ」「カゼひいちゃうからあっためて」といきなり誘惑。ここまでなんとたった 7 ページ。読者的にはまだ 5 分ぐらいしか経ってません。展開はやすぎ、神速です。Godspeed です。

名乗ることもせずに別れたちえりでしたが、翌日、大学(外観はどう見ても中学か高校)で友だちと話していたところ、いきなり現れた裕樹に声をかけられます。「きのう大学名聞いてたし、それに…」「定期にフルネーム書いてあったから」と忘れ物のお届け。大学のキャンパスって普通はすごく広いので、どうがんばったって見つからないと思うんですが(大体、大学生は大学に来ません)、まあ、真面目な学生なんでしょうね、ちえりは。

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参考資料:神代先生が描く大学生ちえりの夜

もう会うこともないと思っていたちえりは、一緒に話していた友人の強引な誘いによって裕樹と食事をともにし、雨が降ってたので車で送ってもらうことに(友だちは空気読んで先に帰宅)。雨の路面を見て、ちえりが「なんかステージの上にいるみたいでキレイ」と云った瞬間、固まる裕樹。そして、口を開いたかと思うと「ねぇ、僕と付き合ってくれない?」。ななななにー。

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もちろん、この発言にはちえりも驚きを隠しきれません。しかしこれは、ナボコフ風に云うと「雨に濡れた路面のテーマ」であり、この話の根幹をなす重要なテーマです。しっかり記憶に留めておいてください。

さて、こんな感じで付き合い始めたちえりと裕樹でしたが、ある日、ちえりが蟹鍋をつつきながら「そ、そーいやこのカニご両親から送ってきたんでしょ? お兄さんのぶんはいいの?」と問います。裕樹が兄と同居しているということは、実は最初に部屋に連れてこられたときに明らかになっているのですが、ちっとも帰ってこないらしいんですね。で、そう云われて兄である力樹(りき)に電話する裕樹でしたが、なにやら兄がトラブルに巻き込まれたらしい、と力樹を迎えに行きます。

なかなか帰ってこない裕樹を待つうちに寝込んでしまったちえりに、帰ってきた裕樹はいきなり襲いかかります。

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「いつもと違うのもたまにはいいじゃん」。ベロが…。出先でかき氷でも食べてきたんでしょうか。これが友人をして「王子じゃん」と云わしめ、ちえりをして「でも…優しいセックスだったな」と思わしめたあの裕樹なのでしょうか!?

荒々しいセックスを終えた翌朝、再び姿の消えた裕樹のことを思い出しながら、「でもあれはあれでいーかも」「すごく求められてるカンジがした」と回想するちえりは、同じ顔の人物が二人うつった写真を発見します。「もしかしてお兄さんって双子なの!?」。そして、帰宅した裕樹からの追い討ちをかける言葉。「ごめんね、きのう帰れなくて」。えー、ま、まさか!?!? ん、なに、べたな展開ですって? そう思ったあなたは既に神代先生の仕掛けた陥穽にずっぽりはまりこんでいるわけですが、まあとにかく、波乱の予感を抱え、第 1 話は幕を閉じます。

続く第 2 話は、裕樹による兄の話から始まります。「ひと言で言って獣(ケダモノ)!!」「とくに女性には見境いなくてね」って、なんかものすごいステロタイプな…ここでタイトルにある「王子と野獣」がそろったことになりますよね!!

で、家に帰る道すがら、路上で裕樹の車を見かけたちえりは、893 に追われる力樹と再び遭遇します。

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なお、神代先生のマンガに登場する 893 は総てこの人。手塚治虫大先生のスターシステムを採用しているわけです。細かい気配りで読者を楽しませてくれる手腕、さすがと云うほかありません。

車にちえりを乗せ、893 を轢き殺そうとして寸止めし、そのまま車で逃げ去る力樹。昨晩のことを裕樹にしゃべられたらどうしようと悩むちえりに対し、力樹からは意外な一言が。「しゃべんねーよ」。そして「よかったじゃん、シュラバにならずにすむぜ?」と云う力樹に対して「そーゆー問題じゃないのっ!!」とちえりはキレ、車から降ります。それを追い、「だってアンタおもしろいんだもん」と車を降りる力樹。「裕樹のいろんな話とか聞きたくない?」と裕樹が悩みを抱え込むタイプであることなど教えてくれちゃいます。

それにしても、神代先生の口調によるキャラづけ力はすさまじいものがあります。一体、誰が「シュラバ」などという表現を思いつくでしょうか。サザン・オールスターズにそんな曲があったような気もしなくはないですが、あちらが語呂を利用した洒落のようなものであったのに対して、神代先生はこの言葉を普通の会話文に紛れ込ませることで、力樹の「憎みきれない悪党」的なイメージを強化することに美事に成功しています。くぅ~、かっこいいぜ!

そこにまたも雨。梅雨なんでしょうね、きっと。その雨を見て力樹の口から出た言葉は…。

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「俺さぁ、雨の夜の道路かっとばすの好きなんだよな。なんかステージの上にいるみたいでさ」

来ました、「雨に濡れた路面のテーマ」!! 以前、同じことを云ったちえりは力樹に対してここで一気に親近感を増します。その話を聞いた力樹は、えっらい爽やかな笑顔で腕に携帯の番号を書き入れます。(なお、「かっとばす」という言葉で、力樹のキャラづけがさらに徹底されていることにも注目。)

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もう、こんな笑顔されたら、乙女はどきどきですよね! パステルに出てくる女性キャラなら、まんこ濡れる恐れすらあります。ご多分に漏れず、ちえりも頬を染めるわけですが、「裕樹もアンタみたいにわかりやすいと嬉しいんだけど」とちえりが云うや否や、力樹の態度が豹変。手を出さないという約束を破って無理やりキス(警官が来たのでそれだけで退散)。

そんなことがあったあとなので、裕樹のところに泣きつきに行きますが、何があったかは云えません。それどころか、セックスしながら「もっと激しくあたしを求めてよ」「もっと」「力樹みたいに!!」と思ってしまいます。ビッチですね。さすがですね。

翌朝、裕樹が冷たい目で自分を見ていることに気づきどうしたのかと問うと、裕樹は「腕に兄の携帯番号書いてあるよ」「兄は寝た女にしか携帯番号教えないんだよ」と吐き捨て、家を出て行ってしまいます。ちえりもそれを追いますが、既に裕樹の姿はありません。「こんなつもりじゃなかったのに」「…なんで? なんでこんなことになるの!?」とマンションを出たところで座り込んでしまうちえり。

てーか部屋の鍵は誰がかけるんだろう?と思っていると、その読者の心配を察知したかのようにマンションの管理人が登場。「あれきみ…、裕樹君のトコに出入りしてるコだよね」「もしかして鍵忘れて出てきちゃったの?」と声をかけてくれます。いや、嬉しいけど、やだなあ、いきなりため口で「出入りしてるコ」とか呼ばれんの…。売女に対する差別感情が透けて見えるすばらしい表現ですね。裕樹のトコには兄が同居してることだって知ってるはずですもん、管理人だし。ああ、ビッチなのバレバレ。

なんて要らぬ心配をしていると、読者の遙か上を行く神代先生は、管理人にこんな言葉を吐かせます。「そーいや裕樹くん元気になった? 心配してたんだよ。お兄さん亡くなってからずいぶん落ちこんでたから…」。えええええーーー!?!? に、にいちゃん死んでんの!? 「知らなかったのかい!? 3 か月前にお兄さん事故で亡くなってるんだよ」という絶妙な引きで第 2 話がおわります。え、予想通り? HAHAHA、今のうちにいきがるがいい。

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区役所にてゲットできるらしい謎の書類(上の画像参照)で力樹が間違いなく死んでいることを確認したちえりは、自分が出会った力樹の正体に気づきます。そこへ唐突に現れる 893。力樹をおびき出すために、ちえりを拉致ってしまいます。ちえりからとっくに力樹がこの世にいないことを聞いた 893 は自分の仕事が終わったと納得しますが、現れた裕樹にはきっちりお返し。そらそうです。車で轢かれかけましたからね。

893 が去ったあと、倒れた裕樹から兄の話が聞けます。はちゃめちゃながらも皆に好かれる兄、優等生であり続けても少し足りないだけで周囲から失望される自分。そのことを憎みつつも、どんなときでも自分を愛してくれた兄が忘れられない。とかいう感動的なはずの話が聞けるんですが、ちえりは「でも──もうあなたにはついていけない…」と至極もっともな別れを告げます。裕樹にとっては踏んだり蹴ったりですが、ま、普通に考えりゃそーなるよね。いくら兄ちゃんが死んで辛いからってさあ、自分でわざわざ兄ちゃんになりきったりしてんだもん。立派な吉外じゃないですか。んなもん、誰だってふりますよ。パステルったら夢見がちな女性ばっかり登場するんですが、めちゃめちゃまともなんで驚きましたよ。

と、喜ぶのはもちろん浅はかな読者でしかなく、しばらく経った雨の日に力樹のことを思い出していたちえりは、裕樹が力樹のふりをすることで、自分にしか見せられない一面を見せて甘えていたんだ、ということに気づいてしまいます。まあ、そうかもしれませんが、ていうか確実にそうですが、それにしたって甘えすぎです。

なーんて思うはずもなく、外に出ると歩いている裕樹を発見! ご都合主義? 何ですかそれ。抱きついて「あなたの演じた力樹があなたの一面なら、それも合わせてあなたが好きよ」と告白すればオールライト。んで、例によってセックスするわけですが、そのクライマックス「全部見せて」「心も、体も」も続く超重要な科白を皆さまに聞いていただきたいためだけに、こんな長々とあらすじを書いてきたんです。刮目して見よ!

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「きみの全部が欲しいんだ」

えーーーーーー!!! 棒読み!!!!!! どこ見てんだよ! こっち見ろよ! なんだよこのラスト~。

私、このページを見た瞬間に思わずのけぞりました。やられた! それが最初の感想です。もう、このコマだけで、神代先生はその名をマンガ史に深く刻み込むことになるでしょう。序盤からのステロタイプな登場人物、予想通りな展開の連続は、最後の最後でこのどんでん返しをするためだけに用意されていた、そう読むことしか許さない圧倒的な力が、このコマには込められています。

セックスのあと、「雨に濡れた路面のテーマ」も閉じられます。回想で力樹はこう云います。「こーゆー夜は道がステージみたいで楽しいんだよ」「表舞台はいつもおまえの独壇場だからさ」。力樹も、周囲の期待を総て独占してしまう裕樹を憎む気持ちがあったんだ、それでも変わらず弟を愛してくれたんだ、そのことを悟って裕樹は遂に兄の死から立ち直るわけですが、まあ、これはなんというか、おまけみたいなもんですね。先に述べた大がかりなトリックに気づかない愚かな読者のために用意された、神代先生の優しさです。いちいち演出が心憎すぎます。

全 3 話であったものを一気に紹介したので冗長になってしまいましたが、この冗長さあってこそ最後の崩壊が気持ちよく受け止められると思ったので、読者の苦を承知で書かせていただきました。この長い稿を最後まで読み通してくださり、神代先生の魅力を少しでも感じ取っていただけたなら、紹介者冥利に尽きるというものです。

それでは、また次回お会いしましょう。

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2008年7月 7日 (月)

デリシャスな関係

記念すべき第 1 回は、我が家に適当に転がっているバックナンバーからの紹介。2008 年 4 月号に掲載されている伊勢崎ゆず先生の『デリシャスな関係』。(なお、以下の画像はクリックで拡大版が見られます。)

ストーリーそのものは単純で、仕事先で高校の時の先輩に再会した主人公が、その先輩の趣味である食べ歩きに付き合わされるうち、ラブラブになってめでたしめでたし、とまあ、こういう話です。

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これが本作の主人公。苗字が広重。実に渋い。

で、この広重ちゃん、さっそく高校の時の先輩に声をかけられます。「会社のまわりでうまいランチの店、教えてやるよ」と。
いやー、ありがたいですね。新しい職場って、周りにどんな店があるのかとかわかりませんからね。なのに、それほど親しくもなかった先輩が、いきなり店を教えてくれるわけですよ。この先輩、恐らくカッコイイって設定ですから、新入りのくせにいきなり誘われたりしたら、他の女子社員からの冷たい目にさらされること間違いなしですよ。野郎、余計なことしやがって。

まあ実際、そういう展開もパステルにはけっこうあったりするんですが、今回の広重ちゃんはそういうじめじめしたいじめにはあいません。ラッキーですね。先輩が実はかっこよくもなんともないだけ、という話も。

ともかく、さっそくオムレツを食べに連れてってもらった広重ちゃん、オムレツ(実はどう見てもオムライスなんですが)のおいしさに感激!

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「んー、おいしい~~♥ ソースと卵が絡んで深い味になる!」

頼んでもないのにグルメ番組のような解説を交えて食べてくれる広重ちゃんに先輩も大喜び。もちろん、大はしゃぎとかではなく、クールに「連れてきたかいがあるよ」とか「食べて喜んでくれたらやった!って思うしね」とか、まあその程度のさりげなさ。

続いて、さりげなく自分の趣味が食べ歩きであること、先日は信州に韃靼そばを食べに行ったことなどにさらりと触れます(ちなみに、この時点で JOJO 広重とか『韃靼人宣言』とかいう言葉が思い浮かんだ人は、読むブログを間違えていますので、お引き取りください)。これはもちろん、広重ちゃんから「いつか私も連れてってください!」という科白を抽き出すための前振りなわけですが。

さて、首尾よくご飯を食べに行くことになった先輩と広重ちゃんですが、「何が好き?」と問いかける先輩に対し、「和食です」と答えたところ、「じゃなくて」と否定されます。え? なんて答えればよかったんですか?

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「和食なら何が好き? 海鮮がいいのか山の幸がいいのか、丼ものがいいのかとか あるいは薄味・濃味とか」

そそそんなたたみかけられても~。と、普通ならたじろぐところですが、初めてですし、なんてったって憧れの先輩ですからね、ここは素直に「魚系のお鍋とか…?」と半疑問文で答えておくことにしましょう。先輩も「じゃあ今度の週末、出かけるぞ!」とノリノリです。

週末、東京駅で待ち合わせた広重と先輩、なんと先輩、広重ちゃんを京都に連れていきやがるおつもり。きょきょきょきょうとーーーーー!?
と、これだけでも驚きなのに、ぽかんとしている間に京都に着き、「でもよく考えたら、これって先輩と京都旅行じゃん!」と気を取り直した広重ちゃんにさらに追い討ち。「広重急げ! レンタカー予約してあるんだ。これから 6 件の店を回るからな。予定どおりに進まないと全部まわれないぞ」っておい! 6 件じゃなくて 6 軒だろ!という誤字に対するつっこみはさておき、なんで 6 軒もの店をはしごしなけりゃならんのでしょう。ご丁寧にコミケに参加するオタクみたいに、どこを回るかが記された細かい地図まで作ってあります。ひいいー。しかも、希望した鍋はよりによって最後。んなもん、うまいかどうかわからんくなっとるっちゅーねん! 空腹は最高の調味料とかいう言葉、知らないんでしょうか。それとも、グルメはそんなこと気にしないのか??

まあ、結局ぐじ鍋とやらをおいしくいただきはしたのですが、京都まで来て死ぬほど満腹した広重ちゃん、さすがにグルメ番組の解説者のような弁舌は消え、「何これ! すごくおいしいっ…!」と月並みな感想を述べるに留まります。このコマ、顔はすごく笑顔であるにもかかわらず、科白をありきたりなものにすることで、おいしいと云いつつ満腹で疲れたという無意識を露呈させる高度なテクニックが使われてます。先ほどの味に対する細かい感想があってこそ、このギャップが映えるわけです。さすが伊勢崎先生。背筋にひりひり来るぜーーーー。

さて、これに懲りた広重ちゃん、「今度は近場でおいしいお店に連れてってください」と釘を刺します。で、「今度はイタリアンで」と云ったところ…。

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「しまった」

またもたたみかけるような勢いでこだわりどころを尋ねてくる先輩。さすがの広重ちゃんも心が空に飛んでます。

そこは、「会社でも休日でも一緒にいられるのはすごく嬉しい」と食べ歩きに付き合う広重ちゃんでしたが、一つの不安が。「付き合ってるわけじゃ… ないもんね…」。一体、どういうつもりで先輩ったら私のこと誘ってんだろう?

んなもん、男の立場から考えれば下心に決まってるんですが、どうやら先輩、飯に誘うだけで「おなかいっぱいでしんどいのか。じゃあちょっと休んでいこうか」とか云ってホテルに誘ったりは全くしてない様子。だ、大丈夫か? ちんぽついてるか?? いやいや、そんなバカな男ばっかりじゃありませんよね、世の中。下心ばっかりで動くはずありませんよね。フェミニストに怒られちゃいますよ、ホント。下心なんかある程度は隠しとかないと、ひかれちゃいますもんね。大体、「私が入社したとき、よくわかりましたね。高校のとき、特に面識なかったのに」と尋ねる広重ちゃんに対し、先輩は「それは…、広重って名前が変わってるから覚えてたんだよ」と流すぐらいですから。

さて、そんな先輩のことを考えながら体重計に乗った広重ちゃん、当然のごとくデブった自分に気づかされることになります。「これじゃ恋人になるどころか、好きにもなってもらえない!」と焦る広重ちゃん、即日ダイエット開始に踏み切ります。

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どうでもいいことですが、顔がデブなのはこのときだけ。

ダイエットを試みる広重ちゃん、先輩からの食事の誘いも、休みには用事があるということにして断腸の思いで断ります。「じゃあランチにラーメンでもどう?」とさらに訊いてくる先輩に「すみません、まだ仕事がありますので…」と逃げるように告げる広重ちゃん。ええ、もう、綺麗になるためには仕方ないんです! 私のこの思いをわかって、先輩!

とか盛り上がる私をよそに、たった 2 度の食事を断られただけの先輩、いきなり「俺のこと嫌いになった?」

ええええええーーーーーーー。ど、どんだけ自意識過剰やねん…。心の狭い私なら、間違いなく「てめーのためにダイエットしてんだよ! でももうやめた!」とか、はしたなく逆ギレしてしまうことでしょう。

でも広重ちゃんは違います。「そ…、そんなことないです。むしろ大好きです」と告白! きゃー! きゃーきゃー!! そして、太り続けて嫌われるのがいやでダイエットしていることも打ち明けます。さらに「逆に先輩は私のことどう思ってるんですか!? ただの食べ歩き仲間ですか!?」とたたみかける広重ちゃんに、嬉しすぎる答えが返ってきます。

Hiroshige_koibito
「俺 勝手に… 恋人だと思ってた

ななななんですと~~~~!?!? か、勝手すぎる! 謝罪を要求しる!
「いつでも一緒にいてくれるし、楽しそうに食べてるし… そう思ってた」じゃねーーーー。そんなんで恋人扱いできるんなら、私も目をつけた女の子みんなを食事に連れてきますよ! もううっはうはのハーレム状態じゃないですか! ビバ、食べ歩き!!

すみません、取り乱しました。で、まんまと付き合うことになった広重ちゃんと先輩、パステル恒例のセックスシーンに至ります(知らない人のために書いておきますが、『恋愛白書パステル』は、恋愛があってセックスがあっておしまい、という話を掲載している雑誌です)(そんなわけですんで、以下は画像なしでお送りします)。

そのセックスシーンは、「じつは高校生のとき…かわいいなって思ってて、それで名前覚えてた」とかいうずるっこい白状から始まります。なんだよ! 最初から云えよ! やきもきしちゃっただろうが! てーかやっぱり下心か! 一瞬でもフェミニストだと思った俺がバカだったぜ、ちくしょう。金返せ!

しかも、「でも本当においしいから太っちゃいました」と云う広重ちゃんに対し、「これくらいのほうがいいよ」とか「ガリガリより触って柔らかいほうが俺は好きだな」とか云いつつ、「ぽよ」だの「ぷにっ」だのとおなかを触りまくり。腹を触るんじゃねえ、腹を。でも、広重ちゃんは「気にしてるのに~~」と云うだけ。くぅ~、あくまで広重ちゃんはかわいいなあ。し、死にたい。

もちろん、クンニのシーンでは「広重のここ… おいしいよ」とグルメネタが引っ張られます。そして広重ちゃんも「一緒に食べるの…」とフェラチオ開始。そうだよね! 晴れて付き合えることになったし、太るとかそこまで気にしなくてよくなったもんね! 一緒に食べるよね! よかったなあ、広重ちゃん。って、食べてんのちんぽですが…。

そして最後は焼き肉を食べに出かけ、「部位によっておいしいお店が違うからお店をハシゴするんだ。そしてそれを全部歩く! これで運動にもなるだろ?」という、ぬるいギャグでおしまい。ん~、いや、ホント、いいマンガでしたね。ごちそうさま!

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はじめに

20世紀の偉大な小説家、ウラジーミル・ナボコフは次のように述べている。

芸術の魔法にどっぷりと身を浸すために、賢明な読者は天才の作品を心や頭で読まず、背筋で読む。たとえ読むあいだ、少々超然とし、少々私心を離れていなくてはならないとしても、秘密を告げるあのぞくぞくとした感覚が立ち現れるのは、まさにこの背筋においてなのである。

『ヨーロッパ文学講義』、TBS ブリタニカ、p. 9

また、そのためには「なによりも細部に注意して、それを大事にしなくてはならない」(同上、p. 3)と述べている。

このブログは、ナボコフの上記の言葉に従って『恋愛白書パステル』を精読していく、というただそれだけのものである。読者の皆さまにも、パステルの魅力を知っていただければ、これに勝る喜びはない。

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