« 2008年7月13日 - 2008年7月19日 | トップページ | 2008年7月27日 - 2008年8月2日 »

2008年7月20日 - 2008年7月26日

2008年7月26日 (土)

院内 Love 感染

いやー、暑いですね。暑さに負けてだらだらしてた上、デジカメが没収されるという困難の解決策も思いつかず、さらに未だにコメントが 1 件しかないという悲しい事実に打ちのめされ(とかいってさらにだらだらしてたら誤字の指摘があり 2 件に増えました…)、Web で観たことも観る予定もない映画のレヴュー(「破壊屋」でぐぐってください)を読んでワハハと現実逃避してたら、いつの間にか土曜の夕方になっていました(ホントは金曜の夜から書き始めました)。あわわ、更新しないと…。
唯一のコメントをつけてくれたり、たまに感想を送ってきてくれたり、職場のパソコンからこんな恥ずかしいサイトを覗きに来てくれたりする女性読者たちが俺にはいるじゃないか! 男性読者は読むだけ読んでリアクションを全く寄越さないので無視しよう。

さて、今回は発売されたばかりの最新号からのご紹介(パステルは毎月 24 日発売です!)。前回に続いて病院ネタになるのは厭だったのですが、読んでいる最中から「これを紹介しないでどうする!」とわけのわからん使命感がめらめら燃え上がってきてしまったので我慢してください。

作者の北マトセ先生(愛称はマートンらしい)といえば、今年の 3 月号で「ロマンチック・エゴイスト」という傑作がまだ記憶に新しいですが、今回の「院内 Love 感染」もすばらしいです。

ところで、本題に入る前に一つだけ。
パステルには毎回、「パステル告白室」および「パステルノベル」というコーナーが設けられてまして、前者は読者からの投稿エピソードが、後者はオリジナルの話が、それぞれ挿絵つきの文章で語られるというものなんですが、挿絵を描く人の画力が高くないことが多いんですね。
でもまあ、そこはそれ、絵がメインじゃないですし、なんといっても私はこのコーナーに微塵も興味がなくて読み飛ばしてしまうのであまり目くじら立ててぎゃあぎゃあ騒ぎはしなかったのですが、今回ばかりは許せませんでした。

見よ、この扉絵を!!!
Innai1

この扉絵にオッケー出した編集者でてこい!!! なんだこの男のむかつく顔はああああああ。てめえ、55 ページ前にある神代先生の絵みたいに投げ飛ばすぞ!!

Innai2
「ざけたマネしてんじゃねえっっ!!」

……。

この 2 ページをどうしても紹介したかっただけなんです。すいません。
気を取り直して本題に戻りましょう。

今回のお話に、ストーリーというほどのストーリーはありません。いざ書き始めようとして、めちゃくちゃ短くなっちゃうんじゃないかと心配になったほどです。まあでも、見切り発車するのは私のいつもの癖なんで、気にせず進めてしまいましょう。
ヒロインは看護婦の中西さん。男のほうは皆川という名の医師。何科の医者なのかは最後まで明かされません。ま、別になんでもいいんでしょうね。恋愛には関係ないし(それどころかこのあと、本物の医者でなくても問題ないんじゃねえの?とすら思う羽目になります)。

ストーリーは寝ている皆川医師を中西さんが起こすところから始まります。

Innai3_2
「…先生、仕事の時間ですよ」

最初のコマがそこそこでかそうな病院の外観な上、このあと着替えた描写もない儘に Y シャツ、ネクタイ、白衣を着た皆川医師が描かれるので、どうやらこの先生、病院で服を着たまま寝ているようです。起こされるときに「いいかげん自分で起きられるようになってください」と云われてるんで、毎度のことなんでしょう。つまり、そんな存在は聞いたことありませんが、住み込みの医者なんですね。いやー、医者って大変だなあ。

さて、この住み込みの皆川先生を朝ご飯とか歯磨きとか何もなしで「わかったから仕事してください」と押す中西さん、いきなり山盛りのシーツを運ぶ看護婦さんの手押し車にはねられます。どうはねられたのかサッパリわからないのですが、皆川先生は中西さんがクッションになってダメージなし、中西さんはお尻を打った、ということになってます。ドアから出た瞬間にどうやったらそう転べるのか全く想像できませんが、とにかくそういうことになってます。

Innai4
「きゃーー 人はねちゃった」どう見ても棒読みです。本当にありがとうございました。

しかし、そこは皆川先生、なんせ医者ですんで、一日の仕事が終わったあとに中西さんのお尻を診てあげます。「今日一日ずっと痛そうにしてただろ?」と、なかなか優しいお言葉。

Innai5
「何をためらう? もしも括約筋を傷めていたら力仕事にも座り仕事にも差し支えるだろ?」って、え?

か、括約筋って、医学の知識とか全くない私でも知ってますが、尻の穴の筋肉のことですよね? 手押し車に撥ねられたんだから、どう考えたって打ち身ですよね? それで一体どうやれば括約筋が痛むんですか???
大体、括約筋が傷んだら、力仕事とか座り仕事以前に、毎日の排便がえらいことになります。そっちのほうがダントツで心配です。いくら女性に便秘が多いからって、下手したらおむつ着用とかですよ? こういうこと云うのはセクハラの可能性もなくはないですが、んなこと云ってられないぐらい重要な問題のはずです。
そのくせ、「安心しなさい、ひと通りの知識はあるから」とか云ってます。明らかに私より知識のない医者の科白なので説得力皆無ですが、「うーん、いまいち安心できない…」「とはさすがに言えない」という悲惨な理由で診察してもらうことを選択する中西さん。ちょちょちょっと! 危険すぎる! ほとんどパワハラだぞ!! なんで医者の話ってこうも職権濫用ばかりなんでしょうか。パステルの読者に医者はいないだろうとでも思ってんのか? そういう問題じゃねえぞ。

そもそも、ハッキリ云ってこの医者、最初からセクハラする気まんまんですよね? だからぽろっと「括約筋」とかいう言葉出しちゃうんでしょ? 普通ね、純粋に尻の打ち身を心配するなら、括約筋なんて言葉は出てこないんですよ。アヌスアヌスげへへのへ、とかスケベ心を抱いてるからボロが出るわけですよ。言い間違いは無意識の発露っつーフロイトの学説を引くまでもなく下心見え見え。
大体、もうちょっとうまいやりかたがあるでしょう? アヌス大好きな私でさえ、こんなこたぁ云いません。作戦失敗があらかじめ約束されてますもん、こんな科白じゃあ。
が、中西さんは超ド級のバカなので、こんな医者の云うことでもきいてしまいます。私、こんな医者や看護婦がいる病院には絶対に行きません。

という読者の憤りを完全に無視し、「…中西君、案外少女シュミだね」などといよいよ皆川医師は露骨なセクハラに入ります。ちょっと待て! 「い、いいから早くしてください」とかそういう言葉をだな、頬を赤らめて吐いてる場合じゃなくてだな、セクハラ対策委員会とかにだな、とかやきもきしてたら「先生の声、こんなに近くで聞いたの初めて」とかって中西さんはまんこを濡らし始める始末。もういいよ。

Innai6
「ウソ!? 私、今ヌレてる!?」。この状況で濡れる人はいません。

で、まんこ丸出しの中西さんに対して、「中西君、ちょっと肉を開くよ」だの「このままじゃスベるからね」だのとさらなるセクハラを続ける皆川(むかついたんで以降は呼び捨て)。「恥ずかしくて死にそう」じゃねえっつんだよ!!! なんだよ、「肉を開くよ」ってーのは!!! 打ち身の検査でまんこ開く必要がどこにあんだよ!!! くっそー、医者ってこんなことし放題だったのか…。俺も受験で失敗しなけりゃ今ごろは…。

で、「うん、裂傷はない。内出血もないみたいだ。かるい打ち身だね」と、診察する前から俺にでもわかっていた結果を告げる皆川による最後のとどめは、「とりあえず痛み止めは入れておくから」。
ん? い、入れる? 入れるってどゆこと??? と思う間もなく坐薬挿入!!! おいこら。
この期に及んでも「や、やだ中指が」「入っちゃ──」とか思ってる中西さんの頭の悪さには絶望を通り越して諦めすら漂ってきますが(なお、中指が入っちゃうのはまんこ)、どこの世界に打ち身で坐薬を入れる医者がいるんでしょうか。誰がどう考えたって湿布して終わりっつーレベルです。医者にかからなくても、自分で診断・処置できます。なのに坐薬。ひどすぎです。さっきも云いましたが、こんなバカな看護婦と常識知らずの医者がいる病院には死んだあとでも運び込まれたくありません。

Innai7
「はぁはぁはぁ」ピクピクン。感じすぎです。効果音がいいですね。ピクピクン。え、区切らないとだめ?

さて、この極悪な処置のあと、中西さんは一つの悩みに苦しみます。「どうしよ、私…どこかおかしいのかな…?」。ええ、おかしくもなるでしょう、打ち身だったのに坐薬なんか入れられてんですから。坐薬っつーと痔の薬か解熱剤って相場が決まってますからね。具合が悪くなったってことは、解熱剤でも入れられたんでしょう。体温さがりまくりですよ。
しかし、そんな中西さんの頬は赤い上、皆川に肩を叩かれただけで意識しまくり、「…何よアンタのせいじゃない。何もなかったような顔して! 医者なら今の私の状態、説明してよ!!」とか心の中で毒づきつつ、「皆川先生なら、まえの私に戻せるかも」とかむちゃくちゃな結論に飛びつきます。す、す、す、すごいバカっぷりだ。
この時点で読者全員が気づいている「あんたあいつに惚れてるね(理由は不明)」という結論は完全に眼中にない上、自分の具合を悪くした医者にさらにかかろうとするんだからすごい。
普通こういう場合は友人連中に「あいつマジ藪」と罵るだけ罵って別の医者にかかるもんですよ? ああ、中西さんにそういう常識を期待してもしょうがなかったか。白痴を遙かに超越したド低脳だもんな。
しかも、皆川に診てもらう際も「皆川先生」「…お話があります」とか、まるで放課後に愛の告白をする女子高生(しかも 20 年ぐらい前の)。おいおいおい、違うだろ! ここは「おい皆川、この前の処置、正しくなかったんじゃねえの。あれから具合わりーんだけど」って文句云って許される場面だろ!

で、診察開始。「まだ痛むのかい?」「違うんですけど、何か違和感が…」。
は?
翌日ってんならね、慣れない坐薬を挿入されて尻に違和感があるのはわかりますよ。でも、もう 2 ~ 3 日経ってるって設定なわけですよ(中西さんが自分の調子がおかしいと悩むシーンに、他の看護婦が「ここ 2 ~ 3 日、様子がおかしいよねー」と雑談してるコマあり)。おまえ、うんこのあと尻の穴ふいてないんとちゃうけ?
今回も違和感の正体、見切ったり!と思ってましたが、もちろん違います。ありゃ、私でも精確に診断できるってのがパステル、もといマートン・クオリティだと思っていましたが…。
「…そのアツイようなジンジンするような」「うむ、聞いたことのない症状だな」。何このお医者さんゴッコ。エロゲーじゃあるまいし、本職の医者がこんなことするでしょうか(反語)。パステルのマンガって確かに最後はセックスで解決だけど、一応「恋愛」を描いてるんじゃないのかよ! だから「恋愛白書パステル」っていう雑誌名なんじゃないのかよ!! 誰かマートンに雑誌の方針を教えてやれ!!!

診察はさらに続きます。

「もう一度診てあげるから、そのベッドに乗ってまえと同じカッコをしなさい」。
お、たまにはマトモなこと云うじゃん皆川。と思いましたが、超絶バカの中西さんの反応は、「!!」「先生、私、病気かそうじゃないかが知りたいんです。診察なんて望んでません」。アホかーーーーーーー。患部を診ないでどうやって判断しろってんだ! 大体、病気じゃないのモロバレだけど一応「聞いたことない症状だ」っつってんだろ!! なのに見もしないで判断できるかボケが!! 話きけや、このオカチメンコがあああああ。
で、例によってパンツ見られて、「今日の下着は大人だね」と云われつつパンツ下ろされただけでまんこぐしょ濡れ。糸まで引いてます。さすがの皆川も呆れて「これは…すごいな」と云うほど。なんていうか、生き恥ですね。ナボコフ先生が禁じる感情移入ですが、今回の話はぶっ飛びすぎてて感情移入する余地がありません。さすが!

と思いきや、ここでいきなり「どうして私、皆川先生になんか頼ったんだろ」という極めて常識的な思考が生まれます。ちょ。読者の上を行きすぎだろ、マートン先生…。

Innai8
「これは…すごいな」「どうして私、皆川先生になんか頼ったんだろ」。
さあ? バカだからじゃないスか? 全くロマンチックなシーンじゃないのに、背景はなぜか星なのもぶっ飛んでます。すごいぞマートン!

「…もぉやめてください」「なぜ? 診察はこれからだよ」「死んじゃうから」「え?」「恥ずかしくて死んじゃう」。そりゃ俺の科白だーーーーーー。もう、なんか、こんな、ヒドイ…
しかし、皆川のフォローはさらにこちらの羞恥心を加速します。「そうか… そうだね女のコひとりにこんなカッコじゃ恥ずかしいね」という、文法的にもなにやら意味が不明瞭な日本語を吐いた上、「いいよ、中西君は特別だ。ボクの恥ずかしいところを見せてあげるよ」とチャックを下ろしやがります。ゲー! しかも顔にやけてるし。キモい!!!
いや、キモいとかなんとか以前に、もう完全なセクハラです。「か、硬い」と云われたあとに(触んなよ)「かわいいことを言うね(クスッ)」とかって爽やかな笑みを見せたって誰も胡麻化されません。パーデンネンの中西(もういい加減に我慢できないので以降は呼び捨て)は別ですが。

で、皆川、中西に CHU。そのあと「いいことを教えてあげよう。きみの病の感染元(ママ)はボクだ」「きみがボクを想って胸を焦がすよう、きみの体に火種を残した」「君の病名は『恋わずらい』だ」と、読者の予想を全く裏切らない科白。どこの世界にただの打ち身で坐薬を入れられて恋煩いする女がいるのかはわかりませんが。
で、皆川の「せつないだろ? おいで助けてあげるから」という甘言(なのか、これ?)に騙され、「ウソ、だって先生が原因なんでしょ!? きっともっと苦しくなる」とか思いつつ、皆川に近寄っていく中西。
いやさ、「先生が原因なんでしょ!?」って何よ。病名は恋煩いだってわかったじゃん(書いてて死にたくなるな…)。なぁにが「きっともっと苦しくなる」だ。脳味噌ところてんの中西は、どうやら「恋煩い」っつー言葉の意味も知らんらしい。よく看護婦なれたな…。人類のためにもさっさと死んでください。他のみんなの危険が危ないです(© ドラえもん)。

このあとはいつもどおりセックスしておしまい。こんだけ煽っといてアナルセックスじゃないなんて、憤懣やるかたないです。特集「アブノーマルな H を体験してみない?」じゃねえのかよ! 最終的に全然どノーマルじゃん! なんでケツでやらねえんだよ!! 期待して損した(嘘、さすがに期待してません)。
この特集、3 つマンガがあるんですけどノーマルなセックスしてんのはこれだけ(残りは緊縛と野外)。ううう、頭痛が。とか云ってると皆川に坐薬を入れられかねんな。くわばらくわばら。

と、今回は「大丈夫か、パステル?」と心配になってしまうマンガのご紹介でした。ではまた次回、お会いいたしましょう。See You パステル!(友人 Q から送られてきた別れの言葉を採用)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年7月22日 (火)

お医者さま 唇をどうぞ♥

最近、ちょっと悩んでいることがあります。というのも、読者がとんと増えず、「あえぎ声」だの「家庭教師 セックス」だのといった検索ワードでこの blog を引っかけた訪問者がやってきては去っていくんです。そんな単語で検索してんじゃねーよ! 中には「JOJO 広重」や「diablo2」といった検索をかけて飛んできた人もいましたが。すみません、ホント。
しかも、私にデジカメ貸してくれてる友人が、夏休みだから返せと云ってきまして、なんと 7 月末にデジカメが没収されてしまいます。せっかく「よし更新は毎週、火・金にしよう」と決めたのに、Let's パステル、早々と更新の危機です。「まとめて今のうちに撮っときゃいーじゃん」と気楽な提案を頂きましたが、そんな一気にいくつも書くネタ決まるわけないだろ!! あー困った。

と、解決策が思い浮かばない儘に本題に入ります。
今回は、前回ちょろっとだけ名前を出した夏生恒(なつおこう)先生の「お医者さま(ドクター)唇をどうぞ♥」。2008 年 2 月号掲載。ちょっと凝ったタイトルのようでいて、何がどう凝ってるのかさっぱりわからない素適なタイトルがイカすぅ!
以前、2008 年 3 月号はあたりが多かったと書きましたが、この 2 月号もあたりの多かった号で、マンガ全体を紹介するほどではないレベルの作品に、名言が散りばめられまくってます。非常に困ります(夏生先生以外のものでは、めぐみけい先生のものとマソソン先生のものが秀逸でしたので、これはまた後日、紹介させていただきます)。
せっかくなんで、いくつか抜粋で紹介しておきましょう。

  • 「…おまえは百面相がおもしれぇから面倒ではねえな」 in 青井はな「明るい家族計画」
  • 「完全降伏幸福ですから」 in 米谷たかね「完全コウフク」
  • 「セックスって不思議だな…」 in 田中琳「旋律の魔術師 ~Eternal Sky~」(なんと最終回)
  • 「What will be, will be. (なんとかなるさ!)」 in ゆめみきらら「Love Sickness」(※英語が得意でない人への註
  • 「繋がりてぇ」 in 小田三月「Secret Shelter」

ぎえー! 今こうやって列挙しただけでも恥ずかしくて死にたくなるものばかりですね。ううう、パステル畏るべし。百面相がおもろいだのセックスが不思議だのつながりたいだの、マジ勘弁してほしいです。そんなこと云われたら悶絶しちゃいますよ!

閑話休題。夏生先生の作品について紹介しなくてはならんのでした。ついつい要らぬところで盛り上がってしまったことをお許しください。

さて、夏生先生といえばパステル随一の大御所(ホームページビルダーあたりで作ってそうなださいロゴ満載の公式サイトを見てもらえばわかりますが、単行本めちゃめちゃ出てます──パステル以外でもたくさん描いてるあたりが大御所)。本来なら昨年のけっこうな長期連載「ちとせ咲く花の浪漫(ロマンス)」を紹介した方がいいのかもしれませんが、いかんせん、こいつはちょっと長すぎます。全 3 回ぐらいなら、まあ、がんばって紹介できなくもないのですが、最後まで読み通してもらうのが不可能ってぐらい長くなりそうなんで(てか、単につまんないので)。単行本でてますから、気になる人は買ってください。

で、今回の「お医者さま(ドクター)唇をどうぞ♥」ですが、これ先にネタをばらしてしまいます。えー、記憶喪失になった主人公(病院の事務員)に対して、主治医が「きみの恋人の僕が治してあげるからね!」と云ってデートなどを重ねるんですが、なんとこれが記憶喪失につけ込んだなりすましだったという、かなりひどい話です。

同じネタを扱ったマンガに、私の大好きな喜国雅彦による「日本一思い出してほしくない男」(『日本一の男の魂』第 7 巻収録)というのがあります。片思いしてた女の子が記憶喪失になったのにつけこんで部屋に連れ込み、セックスに持ち込もうとするも、「でも、だったらどうして、あなたの名前が日記に一度も登場しないの? 一番多く登場してるのヒロくんて人よ。」とつっこまれ、「NISHIYAMA RYUZO で HIRO じゃないか」と返したり、「じゃ、どうしてあなたとのプリクラが一枚もないの? でもって一番多く写ってて、ロン毛でカッコよくてときどきキスなんかしているこの人はいったい誰なの? ヒロくんてなってるけど。」とつっこまれ、「そ、それは、そいつは…」「俺だ。」と坊主頭のくせに平気で返したりする抱腹絶倒のギャグマンガなのですが、同じ設定ながら、夏生先生のマンガに出てくる主人公は、こんなリアルなつっこみは一切しません(そりゃそうだ)。

Kikuni1
ちなみに、これがヒロくんになりすます男。

さて、では夏生先生のマンガを詳しく見ていきましょう。

まず主人公の上田美々(うえだみみ)についてですが、私が言葉を費やすより、本人の言葉を借りましょう。

Doctor1
「私が事務員をしていたそうなこの田代総合病院の階段から落ちて記憶喪失に陥って 2 週間」。
していたそうな? なかなか古風な言葉をお使いになる御仁ですね。むかしむかし、私はこの病院で事務員をしていたそうな…とか、そんな感じでしょうか。記憶喪失だから自分のことでも超他人事みたいに思えてしまう、という心情がこれでもかと云わんばかりに描写されてます。開始 2 ページ目から背筋にひりひり来すぎです。顎から胸までめっちゃ距離あるな、とか全く気になりません。

そして、そんな美々は「記憶をなくしてからの 2 週間、診察のたびにデートに誘われます」。担当の滝川とかいう先生、やりたい放題です。これぞ職権濫用! 辞書を編纂することになったら、このページを切り取って「職権濫用」という項に貼りつけておきたいぐらいです。いくら「記憶喪失になるまえ僕たちは恋人同士だったんだよ」と云われたって、ちょっと無茶じゃないかと(てか診察のたびごとじゃなくて普通に誘ったらええやん)。しかも、付き合ってたとか実は嘘ですからね。麻酔で寝てる患者をレイプするのと大差ないです。

が、しかし飯を喰いながらこんな場面だってあります。

Doctor2
「うひゃートキメイちゃった! 私…彼のこと大好きだったのかな…っっ」
嬢ちゃん、あんた、騙されてるぜ…。

そんなところへサブキャラの登場です。名前は田代。つい最近、出所したあの人とはなんの関係もありませんが、なにやら美々と知り合いだった様子。しかし、ここでは特にこれといった会話もなく去っていきます。
美々が「うん、ちょっとステキな男性だったわね」と思っていると、そこへ現れた滝川先生。「まさかっっ、どこか痛いとこでもっっ!?」と焦る滝川医師に対して、「いいえあの、もし時間があったら今日一緒にお食事とかどうかな…って」と、トキメイちゃった美々ちゃんはお誘いをかけます。

で、その夜。食事の席で滝川先生、「いやー嬉しいな、きみから誘ってもらえるなんて」と、おもっくそボロ出してます。さすがにここは「? そんなにめずらしいことなんですか?」とつっこまれ、顔を真っ赤にして否定する羽目になるのですが、話題が田代に移ったので難を逃れます。
しかし、ちょっと田代の名を出しただけで滝川先生えっらい不機嫌な顔に。あの温厚な滝川先生が一体なぜ? いや、滝川先生のしてることはマーシーよりずっとひどいと思いますが。

と、謎が解決しない儘に急患で呼び出されます。そんでもって「不謹慎かもしれないけど仕事してる先生ってステキ…」とかってますます恋心を深めるだけ。

お次はいよいよデートです。せっかくオシャレしてきたのに釣り堀に連れて行かれ、「俺の服、めっちゃ浮いてるやん」と思う美々(もちろんこんな口調じゃありませんよ、ホントは)。しかし、釣れ始めると大喜び。

Doctor3
「きゃーーー♥ また釣れたー♥ 私ってば才能あるのかしらーー♥」「先生! すごい? すごい?」と、完全にブリッコ
いや、私ブリッコ好きなんで、あんまり偉そうなことは云えないんですけどね、でも、まあ、ね、その、なんというか…。

もちろん、ここでも惚れ込みポイントが用意されてます。恋愛を加速するエピソードって大切ですからね! この釣り堀での惚れ込みポイントは、いきなり脈絡なく自分がここへ来る理由を語り出す滝川医師の独白です。「ここへは考え事をしないためにときどき来るんだ」「神経内科の医師もね、けっこうストレスたまるんだよ」

Doctor4
「袋小路に入り込むことがあるんだ…」
あ、あれ? この絵、どこかで…。

はっ、ま、まさか!?!?
Kaiji01

げええーっ。な、なんと…。
ここまで、夏生先生の描くキャラが皆もっている不自然なほどに鋭く尖ったアゴについては触れずに来ましたが、それはこれが何を意識しているのか謎だったからです。しかし、このコマでついに明らかになりました。なななんと、夏生先生は、少女マンガ界(?)での福本伸行を目指していたのです!!! もう間違いない。

福本先生による、顔の正面図も挙げておきましょう。

Kaiji03
うう、や、やはりクリソツ…。いや、夏生先生のほうがよりシャープか? やはりその辺、読者層を意識してのデフォルメに違いない。さすがパステル一の大御所、夏生先生。目指してるものが違うぜー。
こうなると、夏生マンガの特徴である「っっ」という科白の端々に見られる表現も、福本伸行を意識したものであることがおわかりいただけると思います。う~む深い、深いぜ。やっぱり人間の業とかを描いていくんですかね。

あっっ、衝撃の発見に気を取られ、ついつい話が逸れまくってしまいました。話を戻しましょう。なんでしたっけ?

そうそう、デートに行ったんでした。帰り道は前半の最高潮。「このまま記憶が戻らなくても、私、先生のこと好きになってもいい?」。告白キター。滝川医師もちょっと狼狽しつつ「…美々…それは告白だよ…? わかってる?」と問いかけます。「よく…わかってないかも…」と美々。「でも…恋人だったって聞いてそういう気持ちになってるんじゃないと思うんだけど」ということで、美々の気持ちを試すため、滝川医師は美々に CHU(当 Let's パステルではキスのことを、よほどのことがない限り一貫してこの表記で行うことにします)。

翌日、仕合わせいっぱいの美々の前に再び現れた田代。「ところで最近、滝川先生と付き合ってるって本当?」「え…はい(最近…?)」と美々ちゃんが疑問を抱いた途端、「そうか…あいつきみの記憶喪失につけ込んだんだな…」という衝撃の事実が遂に明かされます。
真相を知った美々はもちろんガンギレ。「私…あなたと付き合ってなかったの? 恋人じゃなかったの?」「! お…思い出したの?」「本当なのね? 恋人だって言って…私のこと騙したのね?」「き…聞いてくれ美々ッ そうでもしなきゃきみは田代先生と…ッ」パンッ「卑怯者ッ」(中略)「ただ本当にそうでもしなきゃきみは僕のことなんて目に入れてくれなかったんだッ。自分でも…卑怯だってわかってる。だが田代先生をきみに近付けさせたくなかったッ」「恥知らず…ッ」とまあ、さんざんに罵ります。片仮名の「ッ」が極めて効果的。

失意の滝川医師の前に現れるのは田代。「今日はもう上がりですか?」「ええ、上田君と約束してるんです」「…あなたは妻帯者でしょう」「ほんの息ヌキですよ」といきなりやな感じの田代ですが、食事をしながら美々に「記憶喪失のほうはどう? 何か思い出せそうなの? 状況とか…」と訊き、「え、あ、ええ、3 階の中央階段で…」という言葉を聞くや、態度が豹変、「思い出したのか…? きみが…きみがいけないんだ。あんなことを言うから…きみのせいだ」とぶつぶつ青ざめた顔で云い始め、逃げる美々を追った挙げ句、階段から突き飛ばします。
えーっ。妻帯者のくせに息抜きするんじゃなかったんですか!?!? もっとムフフな展開を期待してたんですけど…。

階段から突き落とされ、頭を打った美々は総てを思い出します。誕生日に滝川医師からディナーに誘われても「正直言ってタイプじゃないの、おとなしくて真面目すぎるし」という理由で断っていたこと(本人には他に約束があるからって断ってましたが)、友人の看護婦が田代に孕まされた上、言い逃れようとした田代に業を煮やし、院長にちくろうとして階段から突き落とされたこと(田代は院長の娘と結婚してるんで、ちくられたら医師生命を絶たれます)。
総てを思い出した美々はこう思います。

Doctor5
「私ってなんておばかさんだったの…」「田代先生のことも滝川先生のことも見た目だけ見て中身を見てなかった」「ううん、見ようともしてなかったのよ」「私…おばかさんのままでいたくない」

内的独白だというのに(全裸なのはそのため)、ここでも「おばかさん」などとブリッコの態度を崩さない美々には驚嘆の念すら抱いてしまいますが、自分で云うほどバカじゃありませんよね? 友人の看護婦が孕まされたからって田代に詰め寄り、さらに埒があかないから院長に話を聞いてもらうしかないとまで云ってのけるんですよ?
しかも、その田代のことは、「どちらかっていうと田代先生のほうがタイプかな…」とか云ってたのに、友人がひどい目に遭わされたってんで、きっちり弾劾してるわけですよ。友だち甲斐のある、立派な人じゃないですか。
まあ、ホントにただのバカだったら、なんで滝川医師が惚れてんだっつー話にもなるわけですが、明らかにバカ丸出しの女に惚れる話だって世の中にはたくさんありますからねえ(例えば『タッチ』とか)。

しかし、そう考えると、「きみを田代先生に近付けたくなかった…」「彼は悪いウワサが多かったし…君が傷つくようなことをさせたくなかったんだ、でも…」とか云ってる滝川医師は最低ですよね。なんか「僕が取った手段は最低だった。許して欲しい」とか云ってますが、全然許せません。
だって、田代に近づかないってことは、孕まされた友人の問題を見て見ぬふりするってことですよ? 「田代なんかに近づくな! 友だちが孕んだとかどーでもいいじゃん!」とかそういうことですよ? マジ最低。記憶喪失につけ込んだのも最低ですが、とにかく好きだから田代に近づけない、そのためには他の女が不幸になろうと知ったこっちゃないぜって態度が終わってます。
よしんば友人の話を知らなかったとしても、「美々が田代に近づくのは顔がいいからに違いない!」って思ってるわけですよね? なんか理由があって田代に近づいてるとか思ってもみないわけですよね? それ、美々のこと完全にバカ扱いじゃないですか。どっちに転んでも最低な態度ですよ、ホント。

でも、そんなことは誰も思わないらしく、滝川医師と美々がめでたくくっついておしまい。なんだそりゃーーーー。
やっぱりパステルでカイジを実現するのは夏生先生のご威光を持ってしても無理ってことか。まあ、しょうがないですよね。しかし、男性キャラはみなろくでなし、よりによって一人の名前は田代だったりするあたり、福本伸行な臭いがぷんぷんします。見ようによっては、パステルの限界に挑戦する意欲作と云っても過言ではないかも(どう考えても云いすぎです)
さっすがだなあ、夏生先生。これからは少女マンガ界の福本伸行、いや、夏生“カイジ”恒先生と呼ばせていだだきます!

では、今回はこの辺で。また次回お会いいたしましょう。

註:もんのすごい揚げ足取りになってしまいますが、What will be, will be って文章はコンマの所為で意味不明になってます。文法的な解説はやめておきますが、これは will be をただ繰り返してるんじゃなくて、両方ないと意味が通じないのです。かっこつけで英語を使うのは恥ずかしい、ということですね。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2008年7月13日 - 2008年7月19日 | トップページ | 2008年7月27日 - 2008年8月2日 »